自国のことは、できる限り自国の中で行うべきです。
食糧問題は、その筆頭です。
身近な日用品や電化製品など、さまざまなものに海外製品が使われている日本という島国。
食糧も輸入が大きな割合を占めていますが、自分の食に外国産の食べものが溢れていると感じることは少ないでしょう。
ポテトチップスは国産じゃがいも使用、スーパーに行けば見慣れた都道府県の野菜が売り場を占めますからね。
「自給率が低い? お米だって国産だし、こんなにたくさんの野菜が生産されていて、自給できてないなんて、そんなわけはないでしょう?」
現状を見て、日本の食糧自給率に危機を感じている日本人は多くありません。
農林水産省のHPにも、こんな風に載っています。
日本人が昔から食べてきた品目(米、野菜、魚介類)
日本人が昔から食べてきた米や野菜、魚介類の自給率は、それぞれ米97%、野菜79%、魚介類52%と比較的高くなっています。これは昔から食べていた分、生産基盤や生産技術が受け継がれていることや、生鮮野菜は長期保存ができず輸入が難しい、魚介類は国内で新鮮なまま流通できるといった理由も考えられます。
農林水産省HP「食料自給率って何?日本はどのくらい?」より
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-01.html
でも実際のところ、その野菜を作るには種が必要ですよね。
日本は野菜の種の9割を輸入のF1種(※)に頼っています。
なぜなら、国内にシードバンクが存在しないから。
日本の企業が種を売っているように見えて、その大部分は海外の企業が生産しているのです。
なんらかの理由で輸入がストップすれば、現在の1割以下の野菜しか生産できないということですね。このことは上記のHPのどこにも説明されていません。
さらに農業で使う化学肥料は、原料のほぼすべてが輸入品です。
ということは……「自給率」の言葉の意味から、農水省とすりあわせが必要かもしれないということですね。
また、政府が米農家をぞんざいに扱っているのは周知の事実です。
米農家は「米を食べる人が減ったから、たくさん作ってはいけない」と言われるだけではなく、生産に必要なコストを下回るような米価をつけられています。
私たちの食を支えてくれている米農家を廃業せざるをえない状況に追い込んで、5年先10年先に何が起こるかは分かりきったものです。
近い将来、米の自給率も相当に落ち込むことでしょう。
農業がそうならば、畜産はどうでしょうか。
鶏の卵はここ最近、鳥インフルエンザの影響で生産が著しく低下しました。
私の住む札幌では、昼間にスーパーに行っても卵を見かけません。
元々採卵用の養鶏場が少ないこともあって、北海道では卵が不足しています。
これがすべて鳥インフルエンザの影響とは思っていませんが、安定していると信じられていたものが崩れるのはいつでも一瞬です。
養鶏に必要なエサやヒナも、大部分を輸入に頼っています。
ほぼ自給できている! 物価の優等生!(実際には税金が投入されてますが)と言われた卵も、実際のところは輸入なしで成り立たない生産業なのです。
豚も牛も、そのエサの大半は輸入の穀物であることは言うまでもありません。
真の自給率、そろそろ見えてきましたね。
昨今の世界的な異常気象(干ばつ、洪水、冷害)を考えるとき、日本人が飢える日がそこまで来ているのではないかという不安が払拭できません。
おそらく、あまり遠くない未来にお金を出しても野菜が買えない、高すぎて食糧が買えないなどの時代が来るのでは……と想像します。
中国が世界中の食糧を買い集める中、円安の日本は簡単に買い負けることが予想されます。
「農業政策には輸出とデジタル化が重要だ」などと真逆の対策を打ち出している政府は、なにを解決する気もないようです。
農家や畜産、酪農など、生産業者のバックアップに力を入れるどころか明後日の方向に税金をつぎ込んでいますが、それでもいざその時が来たら自分たちだけはなんとしても助かろうとするのでしょうね。
今からでも、国が主導してシードバンクのひとつでも設立してみたらどうかと本気で思います。
少なくとも、日本がどれだけ食糧問題において脆弱な国であるか、私たちはもっと知る必要があるでしょう。
ひょんなことから農業と食糧生産のことを調べる機会があり、あらためて思ったことを記しました。
(※)F1種……子孫を残せない、一代限りの品種。毎年購入する必要がある。
      
   
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