もの書きなら大抵の人がそうであるように、私は小説が好きです。
江戸川乱歩の虜になった小学5年生の頃。
夢中になって読み進めた児童文学は、そのほとんどが推理小説でした。
好みが偏っていたものの、それらは今の仕事を支える固い基礎になっています。
最近はめっきり小説を買って読まなくなりました。
まとまった読書時間が足りないので仕方ありませんが、好きなものを眺めることができないのは少し寂しいですね。
もちろん、日々読んだり買ったりしている実用書や専門書にも好きなものはあります。
とはいえ、仕事の文字は「純粋に好き」な気持ちだけでは買えません。そこに考察や勉強が入ってくれば、どうしても物語のように没頭するのは難しいものです。
ときに、若者の活字離れが叫ばれて久しいですが、どう思われますか?
あなたも「今の若者は活字を読まん。けしからん」と感じますか?
私はそうでもないと思っています。
小学生から大人まで、頑張って人を集めるWeb小説が賑わっているからです。
このWeb小説の歴史も、もう30年に及ぶというのですから驚きですね。
紙の小説とウェブ小説が日本の文芸のそれぞれ半面であるに留まらず、書籍になったウェブ小説は紙の小説市場において半分を占めている。
『ウェブ小説30年史 日本の文芸の「半分」』著:飯田一史(星海社新書) – 2022/6/22
新聞や小説誌・文芸誌などの書評欄で取り上げられることはまれだが、ウェブ小説は、いわゆる「主流文字」「一般文芸」と同等かそれ以上に「主流」「一般」的(ポピュラー)な存在である。
今や日本の小説市場は、書籍の半数がこのWeb小説、いわゆるラノベ(ライトノベル)です。
某出版社で編集をやっている友人も「ラノベ、もうかるからね……」と遠い目をしていました。彼女が手掛けた本もたくさん売れて欲しいものです(祈)。
若者がいかにWeb小説を重用しているかは、そのPV数で分かります。
日本最大級の小説投稿サイト「小説家になろう」や「pixiv」は、国内のウェブサイトアクセスランキング、上位常連。なお、2022年7月の順位は15位と13位でした。

pixivはイラスト投稿のイメージが強いですが、小説家になろうは、文字だけの投稿サイトです。文字を読むためだけに、LINEを見るより人が訪れるんですね。
いやはや、凄まじいPV数です。
「今の若者は活字を読まない」と嘆く人もいますが、これを見る限りそうでもないと思うんですよね。若者、結構文字読んでる。
「Web小説は低俗」という話題もちらほら聞きます。これもどうでしょう。
たしかに開いてみると「……?」となる作品も、あるにはあります。そこは否定しません。私も気に入った作品に出会うまでは、ラノベにありがちな荒れた文章が苦手でしたから。
でも今は、ラノベの作者たちに知人が増えたせいもあって、面白いラノベもたくさんあることを知っています。
あの軽快さや取っつきやすさは昔の文学にはありません。そういうところが魅力だと思います。
固い文学を高級レストランとすれば、ライトノベルは町の定食屋さんでしょうか。
私は料理にこだわりがあるほうなので、高級レストランの料理が好きです。
でも庶民なので、町の定食屋さんが作る料理も好きです。
どちらにも本気で料理を作る料理人たちがいて、それを楽しみに出かけていくお客さんがいる。そういう選択肢があることは幸いだと思うし、そこに優劣はありません。
文学を愛するもの書きにありがちなことですが、Web小説界隈を目の敵にするのはいかがなものでしょうか。
あんなものは小説じゃないとか、低俗だとかジャンクだとか、貶める言葉こそ美しくないと思いませんか。
自身がいいと思うものは存分に誉めるといいと思います。
でもそこから属さないものを攻撃したり、価値観を人に押し付けたりするのは、やはりもの書きとして視野が狭いと思うのです。
願わくば優劣をつけるのでなく、「ニーズの違いがある」と認識していただきたいですね。
そうすれば、Web小説界隈の作者は心穏やかに過ごせるのではないかなぁ、と。
いちもの書きとして、そんな風に思います。
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