とある耳鼻科医のつぶやき

とある耳鼻科医のつぶやき……という前提で、代筆の一例を載せてみました。
いつもの思いつきです(あまりにも更新しなさすぎなので……なにか書かなきゃって……)。

媒体はブログですね。
医療系ブログの場合、「病院のHPを一新するから」などの理由で、リニューアルされる方も多いです。もちろん、ブログの内容をまとめて本にする方もいらっしゃいます。
院長先生ご自身の、診療への思いが語られるHPって好感が持てますよね。
私もそういう代筆が大好物です。

「がんの5年生存率について」や「ウイルスと細菌の違い」など、一般の方が興味を持って読める雑学的なテーマを載せるのも良いと思います。
いずれの場合も、30分~1時間程度の打ち合わせで内容を決めて記事にします。

ではそんなブログの一例を、ご参考まで。


ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)をご存知ですか?

イヤホンやヘッドホンで音楽を楽しんでいる人は、ご注意ください。

世界の若者、約11億人が「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」のリスクにさらされているといわれています。

耳の中には、蝸牛(かぎゅう)という、かたつむりのような形をした器官があります。
その中に「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」という、音を感じ取る細胞があります。
ここに伝わってきた音の振動を電子信号へと変換し、脳に伝えることで私たちは音を聴くことができます。

この有毛細胞、大きな音や騒音によって傷つくと、壊れてしまうんです。
たとえば、100dB以上の大きな音をヘッドホンやイヤホンで聞くと、急な難聴になることがあります。
80dB程度でも、1週間あたり40時間以上。
98dBで、1週間あたり75分以上の音を聞き続けると、難聴の危険が高いとされます。

ちなみに、100dBは電車が通るガード下の騒音くらいです。
80dbは地下鉄の車内、ピアノ(奏者の後ろに立つ)くらいの音量です。
この程度の大きさで、いつも音楽を聴いていませんか?

耳に異常が発生すると聴力が低下しますが、はじめの頃は多くの人が自覚できません。
耳鳴り、めまいなどもヘッドホン難聴(イヤホン難聴)の主な症状です。
ときには耳の奥に痛みを感じるケースもあります。
また、低音が聞こえにくくなる「低音難聴」や、音がこもった(詰まった)ように聞こえる症状が出ることもあります。

いずれにせよ問題なのは、これらの症状に気付いたときにはすでに難聴が進行しているということです。
有毛細胞は一度壊れてしまうと、基本的に元に戻すことはできません。

在宅ワークや通勤・通学などで、ヘッドホンやイヤホンをする人はとても多くなりました。
「耳の聞こえが悪くなった」と来院する人も、格段に増えました。
耳鼻科医として私が言いたいのは、これだけです。

「どうしても使わなくてはいけないとき以外、使わないようにして」

ヘッドホンもイヤホンも便利な道具ですが、耳のためには可能な限り使用せず、それ以外の大きな音も聞かないようにしましょう。
仕事などで使わなくてはいけない環境でも、こまめに耳を休めるようにしてください。
使用時間を1日1時間未満に制限するなどでも結構です。普段から耳に負担をかけすぎないよう、心がけていただきたいです。

こういう話をすると、みんな「自分は大丈夫だ」と思うのですが、それは錯覚です。
みんな使っているヘッドホンやイヤホンが、難聴のリスクをあげることに間違いはありません。
使い続けていたら「難聴になるかも」ではなく「いつ難聴になるか」という話だと思っていただいてかまいません。
聞こえが悪くなってからでは遅いのです。

目が見えなくなっては困ります。
口や鼻がきかなくなっても困ります。
もちろん耳も、十分に機能しなくては困る器官です。
どうぞ大切になさってください。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP